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情報セキュリティ

なぜ、ルールを作っても“誰も守らない会社”になるのか?

ここまで読んで、こんな気持ちになっているかもしれません。

「言ってることは分かる」
「確かにその通りだ」
「でも現実は、そんなに簡単じゃない」

その感覚、正しいです。

なぜなら、社内のセキュリティが浸透しない会社の多くは、
怠けているわけでも、無責任なわけでもないからです。

むしろ逆です。

経営者も、管理部長も、
本当はちゃんとしたい。
事故なんて絶対に起こしたくない。
社員を守りたい。会社を守りたい。顧客を守りたい。

だからルールも作る。
注意喚起もする。
必要だと思って研修もやる。

それなのに、なぜ回らないのか。

答えは、残酷なくらいシンプルです。

人は、正しいルールでは動かない。 動ける構造でしか動かない。

ここを外すと、どれだけ正論を並べても、現場は変わりません。


よくある会社の風景を、ひとつ見てください

ある会社では、セキュリティ対策として
社内ルールを整備しました。

  • パスワードの使い回しは禁止
  • 業務データの私物端末保存は禁止
  • 不審メールは開かない
  • 添付ファイルは必ず確認
  • 退職者アカウントは速やかに停止

紙にすれば、立派です。
説明会もやりました。
共有もしました。
管理部としては「やるべきことはやった」と言える状態です。

でも、1か月後にはこうなります。

  • 営業は外出先で急ぎの対応が必要になり、私物スマホで確認する
  • 忙しい部署はメール確認の手順を飛ばす
  • 管理職は分かっていても、現場が止まるから強く言えない
  • 新人はルールより“先輩のやり方”を真似する
  • 誰も悪気はないまま、例外が日常になる

そして、社内にこういう空気が生まれます。

「本当はダメだけど、今回は仕方ない」
「理想論を言っても、現場は回らない」
「忙しいんだから、そこまで厳しくできない」
「うちの実態に合わせるしかない」

この瞬間、ルールは死にます。

いや、もっと正確に言うなら——
ルールが死ぬのではなく、“現場の空気”がルールに勝つんです。


社員が守らないのではない

“守れない構造”になっている

ここで、ものすごく大事なことを言います。

セキュリティが浸透しない会社は、
社員の意識が低い会社ではありません。

社員の意識に依存しないと成立しない運用をしている会社です。

これが本質です。

たとえば、毎回の確認が面倒で、
守ると仕事が遅れ、
破っても特に何も起きず、
上司も黙認していて、
見直しの場もなければ——

そのルールは、いずれ守られなくなります。

それは人間が悪いからではありません。
脳がそう動くからです。

人は、毎回強い意志で正しい行動を選び続けることができません。
忙しさ、慣れ、周囲の空気、目先の業務、面倒くささ。
そういうものに、必ず引っ張られます。

だから本来、マネジメントとは
「意識が高い人を増やすこと」ではない。

意識が上下しても、最低限守られる状態を作ることなんです。

ここを勘違いすると、会社はずっと苦しみます。

  • 何度言っても変わらない
  • 研修しても戻る
  • ルールを増やしても抜ける
  • 注意しても、その場限り

そして最後に、こう嘆くんです。

「結局、社員の意識の問題なんだよね」

違います。

それは、そう見えているだけです。
本当は、
社員の意識に頼らないと回らない設計をしていること自体が問題なんです。


ルールが浸透する会社には、共通点がある

では逆に、
“守る会社”は何が違うのか。

特別に優秀な社員がいるのか。
ITリテラシーが高いのか。
最新ツールを入れているのか。

もちろん、それらがプラスに働くことはあります。
でも、本質ではありません。

本当に違うのは、たった一つです。

守ることが、個人の善意ではなく、組織の流れに組み込まれていること。

つまり、

  • 守る基準が明確
  • 誰が見ても同じ判断ができる
  • 定期的に確認する場がある
  • 管理職も同じルールで見る
  • 例外が起きたら、そのまま流さず修正する
  • “やったつもり”で終わらない

この状態です。

ここまで来ると、セキュリティは
「気をつけましょう」という精神論ではなく、
毎月点検されるマネジメント対象になります。

この差は大きい。

前者は、祈りです。
後者は、運用です。

前者は、事故が起きないことを願っている。
後者は、事故が起きる芽を毎月つぶしている。

どちらが安心できるかは、言うまでもありません。


経営者が苦しい本当の理由

実は、経営者や管理部長がずっと苦しいのは、
事故が怖いからだけではありません。

もっと深いところにあるのは、

「責任は自分にあるのに、現場を完全にはコントロールできない」
という苦しさです。

これがつらいんです。

何か起きたら、自分が矢面に立つ。
取引先への謝罪も、自社内の説明も、再発防止も、自分の責任になる。
でも日々の細かな行動までは見切れない。
だから、頭のどこかでずっと不安が消えない。

この不安は、根性論では消えません。
「もっと注意しよう」でも消えません。
「みんな気をつけて」で消えるほど、現実は甘くない。

消える方法は一つです。

毎月、同じ基準で、危険を可視化し、チェックできる状態を作ること。

それだけです。

そこまでできて初めて、
経営者は“祈る側”から“管理できる側”に移れます。


だから必要なのは

“教育の強化”ではなく“仕組みの定着”です

ここを最後に、強く言っておきます。

セキュリティ意識を高めたい。
その気持ちは正しいです。

でも、意識だけを高めようとすると失敗します。

なぜなら、意識は波があるから。
忙しければ落ちる。
慣れれば薄れる。
何も起きなければ緩む。

だから必要なのは、
意識の高さに依存しない運用です。

  • 毎月見る
  • 毎月確認する
  • 毎月ズレを見つける
  • 毎月修正する

この“月次の点検習慣”がある会社だけが、
安心を手に入れます。

つまり、あなたが本当に作るべきものは
立派なルールブックではありません。

毎月、危険側に傾いていないかを確認できるマネジメントシステムです。

そして次の章で、その全体像をお見せします。

“守らせる会社”ではなく、
“勝手に守る側へ寄っていく会社”は、どう設計すればいいのか。

そこが見えた瞬間、
あなたの会社のセキュリティは
“気合いと注意喚起”から、
“再現できる管理”へ変わり始めます。

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