最初に、はっきり言います。
多くの会社は、
情報漏洩が起きたあとに初めて、
「もっと早くやっておけばよかった」と言います。
でも、それは違います。
本当は、やるべきことが見えていなかったんじゃない。
見えていたのに、“まだ今じゃない”と先送りしていただけです。
- 社員教育は大事だと思っている
- ルール整備も必要だと分かっている
- パスワード管理も気になっている
- USB、私物端末、メール誤送信も不安
- でも、日々の業務が忙しくて後回しになる
この状態、痛いほど分かります。
なぜなら、経営者も管理部長も、毎日やることが山ほどあるからです。
売上、採用、労務、顧客対応、社内調整。
その中でセキュリティは、重要なのに、緊急には見えにくい。
だから手がつかない。
しかし、ここに最大の落とし穴があります。
セキュリティ事故は、“重要だけど緊急じゃない”と思っていた会社から順番に刺されます。
しかも、事故の原因は、映画のような大掛かりなサイバー攻撃だけではありません。
本当に怖いのは、もっと地味で、もっと日常的で、もっと社内に溶け込んだものです。
たとえば——
- パスワードを使い回している
- 退職者アカウントの整理が曖昧
- 添付ファイルを深く考えずに開く
- 私物スマホで業務データを見る
- ルールはあるが、誰も確認していない
- 注意喚起はしたが、一度きりで終わっている
- 「うちの社員に限って」という前提で回っている
どうでしょう。
ひとつでも、胸がざわついたはずです。
でも、ここで見てほしいのは、個別の行動ではありません。
もっと本質です。
問題は、
社員の意識が低いことではない。
問題は、
意識が低いままでも回ってしまう会社の構造です。
つまり、事故を起こす会社は、
“危ない社員”がいる会社ではなく、
危ない状態を放置しても、誰も困らない仕組みになっている会社なんです。
ここを見誤ると、対策は全部ズレます。
経営者はこう考えます。
「もっと危機感を持ってほしい」
「ちゃんとルールを守ってほしい」
「なぜ言っても伝わらないんだ」
その気持ちは正しい。
でも、それだけでは変わりません。
なぜなら、人は注意されたから変わるのではなく、
守らないと不便になる環境になったときに変わるからです。
ここを理解しないまま、
- 張り紙を増やす
- 口頭注意を増やす
- ルールだけ追加する
- 研修を一回だけやる
こうした対策を重ねても、現場は動きません。
むしろ最悪なのは、
「一応やっている感」だけが社内に残ることです。
これが危険です。
なぜなら、“完全放置”よりも、
“対策しているつもり”の会社のほうが、自分の危険に気づけないからです。
そして、その空気はこう変換されます。
- たぶん大丈夫
- 今回くらい大丈夫
- 自分だけは大丈夫
- うちは狙われない
- そこまで厳しくしなくてもいい
この「大丈夫の連鎖」が、会社を壊します。
情報漏洩が起きる瞬間とは、
たった1回のミスが起きた瞬間ではありません。
本当の始まりはもっと前。
“その1回のミスが起きてもおかしくない空気を、放置した瞬間”から始まっています。
だから、今あなたが確認すべきことは一つです。
あなたの会社は、事故を防ぐ努力をしている会社ですか?
それとも、
事故が起きてもおかしくない空気を、毎月静かに育てている会社ですか?
ここを直視できる会社だけが、安全側へ移れます。
逆に言えば、
ここから目をそらす会社は、
いつか必ず、
「まさか、うちが」と言う日を迎えます。
その“まさか”は、突然ではありません。
今日の見て見ぬふりの延長線上にあります。
だからこそ、今ここで止まってください。
そして、次のコラム(予定)
“9割の会社が気づかずにやっている危険な勘違い”
を見てください。
多くの会社は、ここで初めて気づきます。
自分たちは対策が足りないのではなく、
対策の向きそのものがズレていたのだと。